ESG

環境

自然との共生(TNFD)

基本的な考え方

当社グループは事業活動において多くの自然の恩恵を受け、自然があるからこそお客様に様々なサービスや商品を提供できると考えています。そのため自然と共生し、自然資本の劣化を食い止め、地球上の限りある資源を次世代に、さらに永遠に残すことは、私たちの責務であると言えます。
リゾート開発で伴う環境変化や、施設建設や事業運営に欠かせない資材や食材等の調達、周辺地域への影響など、当社グループの事業と自然の関連性を適切に把握し、その維持や回復に努めていきます。

体制

当社グループは、持続可能な社会の構築に寄与すべく、事業所ごとに立地や地域性などの特性を生かした取り組みを行うことで、環境保全と事業活動に好循環を生む「環境経営」を推進しています。また、サステナビリティ推進部が各事業部門と連携して、サステナビリティ活動に関する情報の収集や共有を図り、グループ一体とした環境保全活動を推進しています。

推進体制

スタッフへの教育・意識啓発

当社グループでは、環境および社会問題を踏まえた上で、持続可能な社会の実現に向けた活動を行うことが、当社グループの事業継続にも欠かせないことをスタッフ一人ひとりが理解するよう、環境教育を実施しています。
研修や自然被害に備えた緊急事態対応訓練などを通じて「気づきの文化」を根づかせることで、さまざまな問題を自分事として捉え、自主的に活動を行うことを推進しています。また、定期的に環境および社会問題に関する情報を発信することにより、今後もスタッフの意識の啓発にも取り組んでいきます。

具体的な実施例

  • 当社グループ全スタッフを対象にしたeラーニングの実施(計3回:2022/8~9、2023/2~3、2023/12~2024/1)
  • 新入社員研修におけるサステナビリティ講座の実施
  • 社内ポータルサイトや掲示板を通じた随時の情報還流

TNFD提言に基づく情報開示

リゾートトラストグループにとって、美しい自然環境はかけがえのない財産です。一方で、その自然環境は世界中で急激に劣化しているとされており、自然の損失を止め、回復させる「ネイチャー・ポジティブ」に向けた取り組みの重要性がますます高まっています。こうした中、2023 年 9 月に発表された TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言は、企業が自然関連の依存・インパクト、リスク・機会に関する適切な情報開示を行うことを通じて、経済をネイチャー・ポジティブなものに転換することを目指しています。
当社グループは、TNFD の理念に賛同し、2024 年 1 月に、開示提言の早期採用者「Early Adopter」となりました。以下では、当社グループの事業を通じた自然関連課題について、TNFD のフレームワークに沿って情報開示します。

1. TNFDフレームワークとLEAPアプローチについて

TNFDの開示フレームワークは、以下のような内容の開示を推奨しています。

一般要件
  1. マテリアリティの適用
  2. 開示のスコープ
  3. 自然関連課題の地域性
  4. その他のサステナビリティ課題との統合
  5. 考慮した時間軸
  6. 先住民、地域コミュニティ、影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント
ガバナンス 戦略 リスク・インパクト管理 測定指標・ターゲット
  • 自然関連の依存・インパクト、リスク・機会に関する取締役会の監督
  • 自然関連の依存・インパクト、リスク・機会の評価と管理における経営者の役割
  • 自然関連の依存・インパクト、リスク・機会の評価・対応におけるステークホルダーとのエンゲージメント
  • 特定した自然関連の依存・インパクト、リスク・機会
  • 依存・インパクト、リスク・機会が戦略や財務計画に与える影響
  • シナリオを踏まえたリスク・機会に対する戦略のレジリエンス
  • 優先地域の基準を満たす資産や活動の場所
  • 直接操業/上下流のバリューチェーンにおける依存・インパクト、リスク・機会を特定・評価・優先順位付けするためのプロセス
  • 依存・インパクト、リスク・機会を管理するためのプロセス
  • 自然関連リスクの特定・評価・管理プロセスの全社的リスク管理への統合
  • 重大な自然関連リスク・機会を評価・管理するために使用する測定指標
  • 依存・インパクトを評価し管理するために使用する測定指標
  • 自然関連の依存・インパクト、リスク・機会を管理するために使用するターゲットとそれに応じたパフォーマンス

また、自然関連の依存・インパクト、リスク・機会を特定するための任意アプローチとして、「LEAP アプローチ」を示しています。

Locate
自然との接点の発見
Evaluate
依存・インパクトの診断
Assess
重要なリスク/機会の評価
Prepare
対応・報告のための準備
  • バリューチェーンで自然への依存やインパクトが重要な分野の検討
  • 自社拠点、バリューチェーンで依存・インパクトが重要な分野の活動場所や関連する生態系の把握
  • 優先地域(生態学的に影響を受けやすい地域、依存・インパクトが重要な地域)の評価
  • 自社拠点・バリューチェーンの各場所における生態系サービスへの依存、与えているインパクトの特定
  • 重要な依存・インパクトの評価・測定
  • 依存・インパクトの内容を踏まえた、自然関連リスク・機会の特定・重要性評価
  • 特に優先度の高いリスク・機会の特定
  • リスクや機会の管理プロセスの検討
  • 評価内容を踏まえた対応戦略の検討
  • 目標設定方法の検討
  • 情報開示内容の検討

本開示では、TNFDのLEAPアプローチを参考に検討した結果を、TNFD の一般要件および開示提言に沿って開示しています。

2. 一般要件

(1) マテリアリティの考え方

当社グループでは、将来に向けて当社グループが社会とともに持続的に成⾧するために取り組むべき重要課題として、テーマおよびマテリアリティを特定しています。マテリアリティの特定に際しては、お客様や株主・投資家、スタッフをはじめとした各ステークホルダーの関心や期待、経営理念およびグループアイデンティティとの関連、事業への影響などを踏まえ、重要性を評価しています。全社的なマテリアリティの項目として、環境については、CO2 排出量の削減、廃プラスチック・食品ロスの低減、生物多様性の保全を特定しています。
本開示では、その中で自然関連課題に焦点を当てて情報開示を行っています。自然への依存・インパクトについては、当社グループの事業に対する影響のほか、ステークホルダーにとって重要と考えられる内容を開示しています。自然関連のリスク・機会については、当社グループの事業に対するインパクトの観点で重要と考えられる内容を開示しています。

(2) 開示のスコープ

今回の開示では、当社グループの全事業分野、主要バリューチェーン段階について、自然への依存・インパクトの概観を把握したうえで、リスク・機会を検討しています。また、優先地域の評価においては、当社が運営している施設の場所全てを対象としました。
開示推奨項目の中で、シナリオ分析については、今回開示では対象外としており、今後、シナリオ分析のあり方について検討を深めていきます。

(3) 自然関連課題の地域性の考慮

自然関連課題は、地域によって異なります。今回、当社グループが直接事業を行う施設については、優先地域の基準に照らし合わせた評価を実施しました。
特に優先される地域については、今後必要に応じ、詳しい評価を検討します。

(4) その他サステナビリティ課題との統合

自然関連課題は、気候変動など他のサステナビリティ課題と密に関連しており、自然関連課題の検討においては、気候変動などの他の要因による影響も考慮しています。

(5) 考慮した時間軸

今回の開示では、短期(直近 3 年程度)、中期(~2030 年)、⾧期(~2050 年)の時間軸で想定されるリスク・機会を検討しました。

(6) 先住民、地域コミュニティ、影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント

新規にホテルなどの拠点を建設する際に、各種法令を遵守しながら必要な環境アセスメント等を行い、建設予定地の周辺住民を対象として説明会等を実施し、地域社会との関係構築に前向きに取り組んでいます。

3. ガバナンス

当社グループは、持続可能な社会の実現へ貢献するとともに、中⾧期的な企業価値の向上を目指すため、2022年4月にサステナビリティ経営の推進機関として、代表取締役社⾧を委員⾧とする「サステナビリティ委員会」を設置、グループ全体のサステナビリティ戦略を計画、実行しています。また、同委員会の事務局を担うとともに、リゾートトラストグループのサステナビリティに関わる方針の策定や計画立案、施策の実行を統括する組織として「サステナビリティ推進部」を設置しています。
「サステナビリティ委員会」では、定期的に、気候変動や自然関連を含むサステナビリティ課題への対応計画や進捗について、重要事項の審議・報告を行います。同委員会における審議の内容は取締役会にて報告され、特に重要な事項については、取締役会に付議し、審議・決定を行います。
自然関連課題に関しては、同委員会にて事業へのリスク・機会を踏まえた施策の立案や、KPI の検討を行っており、本委員会で承認された施策の実行は、当社グループ各社とともに具体的な活動・検討を進めています。

人権方針・ステークホルダーエンゲージメントについて

当社グループは、グループ経営理念に掲げる「信頼と挑戦」、およびグループアイデンティティ「ご一緒します、いい人生 ~より豊かで、しあわせな時間(とき)を創造します~」のもとで、お客様、取引先、株主、地域社会、スタッフなど、あらゆるステークホルダーの皆様とともに、地域や社会の発展に資する事業活動に取り組んでいます。当社グループの事業活動に関わる全ての方の人権を尊重し、一人ひとりの人生に寄り添うことが不可欠であると認識しています。

  • 新規施設開発時には 2.一般要件 (6)に記載の通り、影響を受けるステークホルダーとエンゲージメントを行っています。

4. 戦略

当社グループ事業全体の依存・インパクトの概観

当社グループの全事業分野と、主要なバリューチェーンの段階を対象に、TNFD の生態系サービス・インパクトドライバーの分類を踏まえ、依存・インパクトの内容やその重要性を評価しました。UNEP(国連環境計画)が開発したツールである「ENCORE」など客観的情報も参考にしながら、各項目の重要性は Very high~Low の4段階で整理しています。
評価の結果、主なインパクトとしては、施設開発・運営による陸域生態系の改変・占有や温室効果ガス排出、ホテル・リゾート施設やゴルフ場での水資源の利用、廃棄物の発生等が特定されました。
一方で依存としては、施設の開発や運営における水資源やその他資源(食品やアメニティ等)の供給サービス、再エネ施設やホテル・リゾート施設での気候調整・災害緩和といった調整サービス、観光資源や癒し、景観といった面での文化的サービスへの依存の重要性が高いと考えられます。
また、バリューチェーン上流である食品等の生産段階での各種生態系サービスへの依存、インパクトの重要性も高いと考えられます。

事業分類・内容 バリューチェーンの段階 自然へのインパクト
土地・淡水域・
海洋利用変化
気候変動 資源利用/回復 汚染/汚染除去 侵略的外来種
陸域生態系の利用 淡水生態系の利用 海洋生態系の利用 GHG排出 水利用 その他資源利用 廃棄物 GHG以外の大気汚染 土壌汚染 水質汚濁 かく乱
全事業 企画・施設の開発 直接 VH VH M VH M M M M
自家太陽光発電 直接 L L L
物流 間接 M H H L L H
ホテル・レストラン事業 食品等の生産・調達 間接 VH VH VH H VH H H H H M
ホテル・リゾート施設運営(レストラン、クルーザー等含む) 直接 M VH M M H
ゴルフ事業 ゴルフ場の運営/維持・管理 直接 M H H H M M M M
メディカル事業 サービス提供 直接 H H M M
化粧品等の開発・製造 間接 H H H M H H M
シニアライフ 施設の運営・管理 直接 H M M
事業分類・内容 バリューチェーンの段階 自然への依存
供給サービス 調整サービス 文化的サービス
水資源 その他資源 汚染浄化 水循環・水質 気候調整 災害緩和・土壌安定 その他調整
全事業 企画・施設の開発 直接 H L L
自家太陽光発電 直接 VL VH M
物流 間接 H M
ホテル・レストラン事業 食品等の生産・調達 間接 VH VH M VH VH VH VH
ホテル・リゾート施設運営(レストラン、クルーザー等含む) 直接 H M L M M VL H
ゴルフ事業 ゴルフ場の運営/維持・管理 直接 H M VL H M L M
メディカル事業 サービス提供 直接 M VL L
化粧品等の開発・製造 間接 H M M L
シニアライフ 施設の運営・管理 直接 H L L

自然資本の適切な利用

調達方針

当社グループでは、調達時における生態系サービスのリスクを鑑み、サプライチェーン・マネジメントについて購買方針・品質管理方針を定めております。

水資源の保全

水循環システム
「クローズドシステム」

「グランディ浜名湖ゴルフクラブ」では、周辺環境に影響を出さずにグリーンを保てる「クローズドシステム」を導入しています。これは、グリーン下に貯水槽を造ることで、ゴルフ場内で発生した農薬を含んだ水を外へ流出させることなく貯水し、その水を再びグリーンに散布するという循環システムです。日本国内のゴルフ場としては、リゾートトラストグループが初めて導入しました。オープン以来、鑑賞池の水質を定期的に測定しており、農薬は一度も検出されたことはありません。環境省の基準値もクリアしています。

クローズドシステム概念図

クローズドシステム概念図

グリーンの水を集め、適切に再利用・蒸発散などの処理を行うことにより、農薬の外部流出を防いでいます。

グランディ浜名湖ゴルフクラブ

循環ろ過による水の再利用

完全会員制のアーバンリゾートホテル「ラグーナベイコート倶楽部」には、三河湾との一体化を演出する大きな水盤があります。その水盤を使うには大量の水が必要です。当社グループは、水資源の保護のため、循環ろ過によって常に浄化した水を再利用しています。水盤から溢れた水は調整池に流れるようになっており、そこで塩素などを除去しています。
水盤の水は、スパの水風呂を冷やすための冷却水としても活用しています。年間で約14,500kWh、一般家庭の3.3年分に当たる電力削減に役立っています。自然の池や湖と同じように、雨が降ると水が溜まり、晴天の日には蒸発するので、周囲の森とともに敷地内の気温上昇を抑制する効果も期待しています。

ラグーナベイコート倶楽部

「サステナブルECOステイ」の提案

当社の環境に配慮した取り組みにご賛同いただき、お客様とともに持続可能な社会を目指すことを目的として、当社ホテルで2泊以上ご滞在のお客様に「サステナブルECOステイ」を提案しています。連泊される際に、部屋の清掃およびアメニティの交換などを不要とされる場合、ご利用日分のECOクレジット(付帯施設利用券)やドリンクチケットなどをプレゼントしています。清掃や消耗品の使用量を抑えることで、環境負荷の低減削減につながると考え、お客様にご賛同、ご協力していただき、実施している取り組みです。

サステナブルECOステイ

生物多様性の保全

環境設計の実施

当社の主要事業の一つである会員制事業の根幹となるリゾートホテルを建設するには、周辺の自然環境を維持し、生かしていくことがとても重要です。2018年4月にオープンした「エクシブ六甲 サンクチュアリ・ヴィラ」は、兵庫県神戸市にあり、六甲山の豊かな自然に囲まれています。「天空の聖域」と呼ぶにふさわしく、都会の生活から離れ、ゆったりとした時間が過ごせる会員制リゾートホテルです。建設する際に、六甲の自然を守り、再生する計画を神戸市と環境省に提案し、自然との共生を実現しました。もともとこの敷地は長年使われずに放置されていた場所でしたが、当社はこの土地を再利用すべく、残せる自然はできるだけ残すように既存の森林の手入れと植樹を施し、生物の保全なども踏まえて、六甲の森を再生させました。

主な環境設計事例

「モリアオガエルの池」

モリアオガエルが棲む池を守るために建設計画を一部変更。
工事完了後も、卵やオタマジャクシの観察を続けています。

「岩の上に立つヤマモミジ」

岩にしっかりと根を張り、移植できなかったヤマモミジ。
希少な1本を残すよう、周辺の建設計画を立て直しました。

生物多様性の大切さを広める「おりがみアクション」

2010年、愛知県名古屋市で「生物多様性条約第10回締約国会議(以下、COP10)」が開催されました。リゾートトラストは、この会議に参加する国際環境機関「IUCN(国際自然保護連合)日本委員会」と共同で、会議のロゴマークでもある「おりがみロゴ(多様な動植物を日本の伝統文化であるおりがみで表現するもの)」をお客様と折り、「10年後の地球」に向けたメッセージとともに、会議会場に届ける活動「おりがみアクション」を実施しました。2010年以降も、COP10にて「国連生物多様性の10年」とされた2011年から2020年までの間、2年ごとに開催される「生物多様性条約締約国会議」の年に「おりがみアクション」を開催。おりがみで折った動植物に10年後の地球へのメッセージを書いて、未来に届けました。子どもたちを中心としたお客様に楽しんでいただきながら、自然のすばらしさや生物多様性の大切さを伝える取り組みとなりました。

ゴルフ場での目土作業

「グレイスヒルズカントリー倶楽部」では、適切なコース管理・維持を行う事による環境活動への貢献として、プレイヤーの皆様に積極的に目土作業※を行っていただいています。ゴルフ場のプレー環境の質を最大限に高めること、安全なゴルフ場を運営することを通じて、お客様とともに自然に優しいゴルフ場を目指してまいります。

  • 目土(めつち・めづち)作業とは、ショットを打つことによってできた芝の穴を土で埋める作業。目土をする事により芝の直りを早くする効果があります。

フットパスプログラム

施設近郊の自然環境を地元のガイドが案内しながら散策できるフットパスプログラムを実施しています。フットパスとは、イギリスで発祥した「歩くことを楽しむための道」を意味し、地元の歴史を聞きながら壮大な景色を楽しみ、今ある自然を守ることの大切さを感じるプログラムです。また参加費用は、自然維持を目的とした保全団体に寄付することで、地元に役立てていただいています。

フットパスプログラム

地域との共生

当社グループでは、自然環境との共生を目指した取り組みとして、地域とも積極的に連携しています。

ネイチャーツーリズム

各拠点において、地域の自然を守る活動を行いながら、その土地の文化や歴史を学べるイベントや体験プログラムを実施しています。その土地それぞれの特色を生かし、スタッフ、お客様、地元の方々との交流を通して、より一層その地域の魅力を感じていただき、環境や文化の保全に努めています。

地産地消

その地域で生産された食材を提供することで、お客様に地域ならではの魅力を堪能していただけます。また、その地域内で食材が消費されることで、輸送にかかる環境負荷が低くなり、美しい自然を守ることに繋がります。

鳥獣肉(ジビエ)の有効活用

農村地域で深刻な被害をもたらす有害鳥獣の捕獲数が増加傾向にある中で、これを地域資源としてとらえ、野生鳥獣肉(ジビエ)として有効に活用しようというものです。

鳥獣肉(ジビエ)の有効活用

その他の取り組みの詳細は社会との共有価値の創造ページへ